イー・ウーマン（ewoman）

3本目の矢（DiamondBar・東京都・48）

3本目の矢である「成長戦略」を明確にして、推進することができなかったのだと思います。「財政出動」と「金融緩和」で株価は上がりましたが、「成長戦略」で実際に成長している様を見せられていないのが株価も伸び悩んでいる原因かと思います。外国人投資家に日本のマーケットを説明する機会に立ち会ったのですが、「アベノミクスで株価が上がった」と過去を説明できても、「これからも成長を続ける」との説明ができていなかった点からもそのように考えます。

株価上昇＝国民生活向上でない！（シンゴパパ・静岡県・50）

最大の問題点は、円安による株価上昇が、物価上昇を始めとする経済回復に直結し、国民生活も向上する、という考えの誤りだと思います。確かに、異次元の金融緩和で円安になり、相対的に安くなった日本株が買われ株価は上昇しましたが、株価の上昇に恩恵を得る人以外の国民生活の向上には結びつかなかったということ、そして、それらの国民が多くを占めた、ということだと思います。

数字のマジック（hiro2・58）

アベノミクスで成功したといわれる株価や円安は、国民年金で預かった資産を不安定な投資先に投資したからで、企業がすべて健全になったとも賃金の引き上げによって家計の可処分所得が増えたとも思えません。マスコミでは大きく取り上げられませんが、私は、昨年のGPIFの損失を見てもアベノミクスは成功ではなく、中所得層が受けるべき分配を移し替えただけのものと見ています。

「成長と分配」の分配が不足（月のしずく・京都府・44）

議長のデータで、中間層の崩壊・二極化が良く理解できました。多少成長したものの分配不足のようなので、アベノミクスは賞味期限切れと判断しました。消費税は広く薄く負担を求めるので適切かと思っていましたが、この状態で消費税を増税すると低所得層にさらにダメージが与えられるのでしょうか。そうであれば、高所得層への課税を強化し、低所得層に分配する仕組みが必要です。教育無償化も所得再分配と捉えれば意味がありそうなので、教育の質の議論とセットで実施してほしいです。

不安感は継続（violet-m・神奈川県・46）

自分は週21時間勤務のため、週20時間以上パート社会保険加入の恩恵を受けました。しかし「サポートするから安い労働力のままでいて下さいね」と雇用側に有利な条件になると、将来の保証のない非正規の不安は続きます。「一億総活躍社会」「すべての女性が輝く社会づくり」と耳触りの良い言葉だけでは、消費に積極的にはなれません。今年度で任期が切れるので、まだまだ就職活動が続きますし。また、中間層の崩壊・二極分化は、国内で争いが起きる火種なので恐ろしいです。

これからの政策を期待したい（えこりん・神奈川県・41）

株価が上がっていることは評価できるが、実生活で景気が上がっているとは実感できない。これからの政策としては、貯蓄のある高齢者への保障を無くし、その分を育児世帯や、これから将来を担っていく世帯への保障に回してほしい。

政治の安定が必要では（変化を楽しむ男・東京都・47）

アベノミクスについては、多くの企業経営者は評価していると感じる。「いまいくん」さんも述べているように、民主党政権時代に比べれば、その成果も出ている。一方で「〇〇の党」というのができたが、政策はないし、また野党協力を訴え、様々な政策に反対している党も、何も結果は出せていない。政治はそんなに簡単なものではないだろうし、余計な予算を使って失敗するより、今の自公政権による政治の長期安定化により、確実な結果を出すことが重要だと私は考える。

労働生産性とプラスアルファ（blueberry53・大阪府・61）

二極化はアメリカでの白人労働者の不満を見るまでもなく、ＩＴの進展と労働の内容的変化で拡大していくことが避けられないと考えます。ＡＩの進展などで成長が見込まれる部分を所得の再分配に結び付けられますが、基本的に労働内容の変化の方向性は変わらないと思いますので、労働生産性を上げる対策（教育の充実・低額化、ＡＩ進展など）とともに、労働そのものへの価値観の多様化を図る施策、また、人間の能力の多様な評価の推進などダイバーシティ面での意識の変革が重要と思います。

保護主義への回帰（いまいくん・埼玉県・54）

議長からの問いかけである今後の政策ですが、中間層を厚くするには行き過ぎたグローバル化との決別→一定期間の保護貿易化が必要と、私は考えています。例えば同じ自動車業界でトップの所得が10億円超の日産と３億円程度のトヨタを比較すると、いかにグローバルスタンダードなるものが歪であるかは明白だと思います。バブルの再来を望んでいるわけではありませんが、「一億総中流」となるようグローバル化の見直しが急務であると考えています。

2回目の投票結果も、８割以上がYES（賞味期限切れ）です。
 
アベノミクスの問題点として、
「「成長戦略」を明確にして、推進することができなかった」（DiamondBarさん）、「円安による株価上昇が、物価上昇を始めとする経済回復に直結し、国民生活も向上する、という考えの誤り」（シンゴパパさん）、「「成長と分配」の分配が不足」（月のしずくさん）
 
必要な政策としては、
「貯蓄のある高齢者への保障を無くし、その分を育児世帯や、これから将来を担っていく世帯への保障に回してほしい。」（えこりんさん）、「労働生産性を上げる対策、労働そのものへの価値観の多様化を図る政策」（blueberry53さん）、「高所得層への課税を強化し、低所得層に分配する仕組みが必要です。」（月のしずくさん）という声が届いています。
 
一方、「民主党政権時代に比べれば、その成果も出ている。」（変化を楽しむ男さん）などの声もあります。
 
私は、安倍政権・アベノミクスに足りない政策は、所得再分配（とりわけ富裕高齢層からの負担増）と財政再建への一層の努力（さらなる歳出削減と歳入増加努力で、将来世代への負担の先送りを回避すること）だと考えています。しかし賞味期限の切れたアベノミクスの受け皿となるべき「希望の党」の政策を見ると、消費税凍結ということのようです。
 
では、高齢化の進む中、増税延期でどのようにして、少子化対策や幼児教育などを含む社会保障政策を遂行していこうとしているのでしょうか。かつて民主党は、「月2万6千円の子ども手当」という、財源なき選挙公約をしましたが、それが実現できませんでした。そこから、国民は民主党政権の政策遂行能力の欠如を実感し、民主党は失速した、という事実があります。
 
「希望」を実現するためには、かならず財源が必要になる、ということは、残念ながら冷徹な現実であると思います。消費税を政局の具にしない、これが12年の三党合意でした。今回、希望の党は、この精神をも破ったわけですが、非現実的な政策だと私には思えます。
 
つまり、現段階では、与党も受け皿としての希望の党も、国民の声を真摯に受け止めているとは思えない、しかし必要な政策については、声を出し続けていかなければならない、これが私の率直な感想です。このことは、東京財団の税・社会保障調査会でも議論しています。
 
それでは、最後の議論に入ります。
アベノミクスが賞味期限切れだと思う方（YES）、賞味期限切れではないと思う方（NO）も、「所得再分配（とりわけ富裕高齢層からの負担増）」と、「財政再建への一層の努力（さらなる歳出削減と歳入増加努力で、将来世代への負担の先送りを回避すること）」についてはどう思われますか？　また希望の党など、その他の党の政策はどのように評価しますか？


★森信議長の過去の円卓会議より
・税や社会保障。世代間の負担は不公平ですか？
・消費税引き上げ。先送りに賛成ですか？
・軽減税率にマイナンバーカード。あなたは使いますか？

• 2017.10.04
• 森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹、中央大学法科大学院特任 教授