イー・ウーマン（ewoman）

想像力、表現力（ポーチュラカ・福島県・42）

違う人間を演じるには、演じる人間の世界のイメージを膨らませていかないと出来ないと思います。そしてそのイメージを表現する力が必要。イメージするためには勉強が必須ですし、表現力を磨くために地味なトレーニングに耐えなければなりません。体が丈夫、感性が豊かというのは重要かと思います。他には演じることが人を感動させるすばらしいことだという成功体験なども、演劇に磨きをかけるにはあったほうがよいと思います。

演技の理由と俳優との違い（ぴょこん・神奈川県・38）

私は精神科の看護師をしています。看護師の仕事とは一体何だ、と悩んだ時に「表層演技」「深層演技」という言葉を知りました。私は看護師だけれど、自分自身を守るために「演技」をするようになりました。日々、患者と関わる時は「演技」をしています。だから、俳優の方の仕事ぶりはとても興味深いのです。俳優の方は、「みられる」ことを前提としているので、そこが私と違うところかな、と思います。看護師はみられているけれど、相手を刺激をする場所が違うのです。

魂をこめること（ゴールディー・静岡県・36）

外から見える形（スタイル・声・体の使い方）が違うのはもちろんだけどそれだけではない気がする。俳優は自分の性格や考え方とまったく違う役を演じる時、大げさに言うといったん自分を捨てなければならないのでは？　その気持ちの切り替えができるか？　日ごろの人付き合いの中でそういう柔軟さがあれば、世の中もっと生き易くなるに違いない……。

客観性かなあ（kemkem・岡山県・51）

いつも自分の心の中では私も俳優です。すてきな舞台や映画を見て、ヒロインになったところを妄想します。でも、実際は？　心の中では自分で名演技、と思っても実際にお客さんが見たときに共感できる演技にはなっていないでしょうね。実際にさまざまな場面で「アタシがこれだけ説明してるのに何でわかってもらえないの」などと感じることもしばしば。相手に共感を得るための客観性を俳優は持っているのかなあと感じています。

俳優は見るもの（あきんぼ・東京都・43）

俳優はドラマや映画、舞台で見て楽しむものであって、自分が演じる側になりたいと思ったことはありません。 Yesに回答した方がどんな理由でYesとしたのかを読むのが楽しみです。

日本には「演技」の極意を表す言葉として「離見の見」ということばがあります。
「離見の見」は、離れて自分を見ること。俳優は舞台に立っている時、観客の目で自分を見る必要がある、という意味です。

ぴょこんさん、大変なお仕事ですね。僕は病院で演劇ワークショップのボランティアをさせていただいたことがあります。
例えばバーのカウンターの中に居るバーテンは、常にお客さんの視線の中で仕事をしています。バーテンダーの仕事を「演じている」とも言えます。
 
ゴールディーさん、ある意味で「自分を捨てる」必要があります。捨てるべきは「表層的な自分」。つまらない見栄。するともっと深いところに隠れていた新しい自分に出会えます。これが快感で続けているのかもしれません。
 
kemkemさん、俳優もイメージトレーニングをたくさんします。よく言われるのですが「家で一人で稽古しているときは誰でも名優」。稽古場でやってみるとなんだか違ってしまう。それの繰り返しです。
そしてポーチュラカさんの言う通り、一番大事なことは「イメージすること」。想像力はすべての源です。その地平ではプロもアマチュアも関係ない。もちろんプロは身体がよく動いたり、大きな声が出たりします。ことばもはっきりとしている。それはイメージが深くてはっきりしているからです。
 
舞台俳優は身体一つで舞台に立ち、そしてあらゆる場面を演じることができます。最終的には装置も衣装も必要ない。ここがテレビとの大きな違い。

そこで大切な「武器」は自分の想像力。それも広く大きく細部にまで。見たことも無いものを語る時、例えば恐竜。実際に見たことは無いけれど動物園で見象の皮膚やとかげの肌の質感を思い出したり、あの手この手で想像します。なので稽古場でもストレッチに加えて、色んなものになってみたりするエチュードをしばしば入れます。
だからこそ普段からみて、きいて、感じることが大切になります。
次にそのイメージをどうしたら伝えられるか身体で一生懸命探るのです。
 
そしてkemkemさんの体験のように、この「伝える」がなかなか難しい。「伝わった」／「伝わらなかった」体験を教えていただけませんか？

• 2010.09.30
• 丹下　一 俳優・演出家　コミュニケーショントレーナー Tama+ project代表