イー・ウーマン（ewoman）

いつも以上に気にかけること（ラビット・東京都・38）

自分から不安を口に出さない場合が多いと思っているので、いつも以上に気にかけ、声をかけることかな、と思っています。会話が始まると「ちょっと心配なことが……」と相手からの発信が始まって、話を聞いていると、聞くだけでストレスが少なくなったり、また何か特別な対応が必要なのかを把握できます。子どもや部下に対してはそのように対応しています。

ほめあい、認め合い（Ｔｏｈｋｏ・東京都・47）

部署や仕事が変わるだけでもプレッシャーですし、前任者がいると比較をされるのでなおさら負担です。ただ、年や経験を積むに従い、「ある程度のプレッシャーや自分・周りへの負担は仕方のないこと、きちんと頑張れば時間が解決してくれる」と割り切れるようになってきました。今は、周りの後輩が不安をはやく取り除けるように、声掛けや質問などをして「ありがとう」というなどを心がけています。自分自身が「ほめられれば嬉しい、そこにいていいんだ」と思うので。

周りの配慮（えこりん・神奈川県・41）

環境の変化をプラスに捉えるようにしています。何事も物事には両面性があり、不安ばかりを見ていては良い面が見えなくなります。子どもも進級や進学で友達や先生、慣れた環境と離れますが、不安は受け止めた上で、新しい出会いや新しい環境を楽しめるような声掛けをしています。周りの大人が不安を受け止められる余裕を失わないことが大切。

子どもの話を聞く・見守る（ayaPa・神奈川県・41）

4月は新クラスで友達ができなかったら……、独りぼっちになってしまったら……、という不安を抱えていました。クラスでどこかのグループに入らなければ、寂しい人、変わった人と思われる、という強迫観念からでした。大学以降は人それぞれと思えるようになり、不安は消えましたが、今でも春になるとあの頃の嫌な気持ちが心によみがえります。あの頃の私に声をかけるなら「大丈夫だよ。安心して一人でも堂々と楽しそうにしてたら、自然とその心に合う人が見つかるよ。」と言いたいです。

トップが心の病の理解をして（morning1967・東京都・49）

私は双極性Ⅱ型のうつ病、いわゆる躁鬱病を患っています。それでも何とか、夫と共に会社を経営していますが、やはり季節の変わり目は辛く、この2日間は寝たきりでした。そのせいもあり、経営者として心掛けているのは、従業員が過度なストレスで心身の状況を崩していないか配慮することです。本人達は、単なる風邪、疲れが溜まっているとしか言いませんが、その裏に心の病が潜んでいないか気を付けて見ているつもりです。各組織のトップが心の病を理解し、働き方等の提案をしなければいけないと思います。

変化に気づくこと（ma ki・滋賀県・31）

人によっては言葉で表現しづらく隠すことがあるかと思いますが、どんな場合でも、態度や表情に変化はあるように思います。大丈夫だろうと思い込んでいるとわずかな変化は目にとまらないですが、もしかして……と気にとめると、いつもと違っていることに気づくことがあります。自分は大丈夫だから相手も大丈夫、なわけはないので、しっかり大事な相手を見るようにしています。

変わらない部分を大切に（ナカサワ・東京都・47）

知的障害のある娘がいます。新入学で周りの環境や通学、放課後の過ごし方もガラッと変わるので、あえて変わらないところを大事にしようと思います。家での過ごし方、毎週の習い事、宿題、手伝いなどのルーティンワークです。

当たり前のことをできるように（kyoko004・神奈川県・39）

当たり前のことですが、人それぞれ経験値も違うし、ストレス耐性も違います。「私が同じような時大丈夫だったから」「私が○歳くらいの時も同じようなことが」と思わないようにしなければいけないと思っています。あと、私も自分では大丈夫だと思っていたのに突然、起立性調節障害になったことがありました。本人も知らない間に負担がかかっていることもある、それを頭において相手に接したい、何かの変化に気づきたいと思います。

不安も配慮も忘れてしまっている（nekosaurus・愛知県・47）

私自身、変化に乏しい職場に勤めているので不安はありません。子ども達は中高一貫校に通っていて、この数年、大きな環境変化がなく心配したことがありません。不安が無いのは良いことですが、議長の「どのような配慮が必要か？」の問いかけにドキッとしました。安泰な境遇に慣れ、かつて自分も感じた環境変化への不安も、不安を抱えている人への配慮も、すっかり忘れてしまっているからです。来年、上の子が大学進学で環境が変わります。その時の為にも、今回の議論をしっかり読みたいと思います。

対策について、それぞれご自身の体験に基づいたいろいろ意見をいただきました。いつも以上に気にかける、声がけをする、話を聞く・見守る、ほめあい認め合う、変化に気づくなどは、どれも必要なことです。
 
社会すべての人が、「環境の変化に弱い人」がいることを理解することも重要です。子ども、高齢者、引っ越しをした人など、発達障害の人、不安障害の人、そして、昨日お話しした、アレルギー、起立性調節障害、睡眠障害などの体質の人などです。環境変化をきっかけに、精神不調を来す人がいることも重要です。「時間がたてば慣れる」「頑張る」などの助言は、本人を苦しめる無責任な行為になりかねません。
 
配慮については、個別の事情で異なり、単にマニュアルを作成すればよいものではありません。学校や家庭では個別の配慮ができても、職場や地域社会では難しいこともあります。
　
そこで、私は、環境変化に不安のある人への対応として、
①やりたいことがあっても、ストレスが多い環境であればチャレンジしない。選択できるのであれば環境変化の少ない方を勧める。
②家族や上司に話をしても理解されないようであれば、養護教諭、スクールカウンセラー、産業医などに相談する。
③必要であれば、診断書を作成し、学校や職場での配慮を求める。
④一時的に、安定剤などの薬物の服用を勧めてみる。などの対応を行っています。
③、④は医療機関でなければできませんが、①、②はどなたにも可能な事です。
 
“morning1967”さんの「組織のトップが心の病の理解をしてほしい」という意見には、社会的な課題が含まれていると思います。経営者と環境の変化に弱い両方の立場としてのコメントです。まだまだ雇用側の配慮が不足しているという指摘です。一方で、組織のトップにも、「過度な負担」を求めることにも限度があり、ほかの社員とその家族のことを考えると……、ということも事実です。
 
職場ではそれなりの責任が生じます。変化に弱い人は、前述の①とも関係し、求職の時点から不向きな職場、職種は選択しないこと、可能であれば事前にどこまでの配慮が可能か雇用側と話し合う機会を設けてもらう、などを提案しています。
 
“nekosaurus”さんの「不安も配慮も忘れてしまっている」というご意見は、多くの方が多少の環境変化は難なく受け入れているという事実を示しています。不思議の国のアリスの“a very merry Unbirthday to you”というフレーズは、「誕生日ではない日を祝おう」という訳になりますが、「なんでもない日おめでとう」と意訳されています。作者のルイス・キャロルはアスペルガー症候群と言われおり、環境の変化に弱い人です。私が知っている当事者は、このフレーズを、「アスペルガー症候群の自分には、毎日が変化の連続で、それ自体が困ることである。『a very merry Unbirthday to you』は、変化のない日があればa very merryという、当事者の気持ちだ。」と説明していました。
 
最後に、4月2日は国連の定めた自閉症啓発デーの広報ということもあり、少し脱線しましたがお許しください。1週間いろいろなご意見をいただきありがとうございました。
 
 


★古荘議長の過去の円卓会議より
・子どもの依存症、本人の自己責任ですか？
・病気か個人の問題か、迷うことはありますか？
・「教育虐待・教育ネグレクト」について考えたことありますか？

• 2017.03.31
• 古荘純一 青山学院大学教授、小児精神科医