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会議番号:3785 開催期間 2025年11月07日- 12月26日
皆様、今回もたくさんのご意見、そして具体的なご質問をいただき、ありがとうございました。「生前贈与の注意点を知っている(YES)」と回答された方は、最終的に23%となりました。 前回、「自分が生前贈与を受けるとしたら?」と投げかけさせていただいたところ、DiamondBarさんからは「家を買う際の援助やローン利用は、親とのつながりを感じられて良かった」という体験談を、また、unagiさんからは「きょうだいで平等に、親が元気なタイミングで受け取るのがありがたい」という、家族の気持ちに寄り添ったご意見をいただきました。 生前贈与は単なる税金対策ではなく、家族のつながりを深め、人生の節目を支援する意味を持つことが改めて浮き彫りになりました。 今回も多くのご質問が届いていますので、お答えしていきます。 まず、いぬいるかさんからの「孫への贈与は相続税の課税対象になるか」というご質問です。 ご指摘の通り、贈与者が亡くなる前の一定期間に行われた生前贈与は、原則として相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。しかし、この加算の対象となるのは、相続で財産を受け取る人に限られます。孫は、通常、法定相続人ではありませんので、原則として相続税の課税対象にはなりません。この理解で合っています。ただし、孫が遺言で財産を受け取った場合や、代襲相続人として相続人になった場合、死亡保険金の受取人だったような場合は、加算の対象となりますので、そこはご注意ください。 n.danさんからの「贈与の記録方法」についてのご質問です。「通帳を通して受け渡しを記録する」というのは、贈与の証拠を残す上で非常に重要です。しかし、銀行から現金を引き出して、また別の口座に入金する場合でも、日付が同じ日、もしくは1日~2日程度の違いであれば、贈与により受け渡されたものだと判断できますので、それでも大丈夫だと思います。贈与があったことを証明するのが難しい場合は、贈与契約書を作成し、合意の証拠を残しておくとよいでしょう。 blueberry53さんからの「葬式代を生前に受け取る場合」についてのご質問です。親御さんの「葬式で迷惑をかけたくないので自分のお金を使って欲しい」というお気持ちは大変ありがたいものですが、生前にお金を受け取る行為は生前贈与として扱われます。結果として、年間110万円を超える場合は贈与税の対象となります。 葬式費用は、相続税の計算上、相続財産から引くことができます。税務上のメリットを考慮すると、あえて生前贈与で受け取らずに、相続財産から支払う方が有利な場合もありますので、専門家とよくご相談ください。 真打ちさんからのビデオレターや貢献度を反映したいというご意見や、JIMAさんのライフイベントに合わせた贈与の考え方は、まさに生前贈与が持つ「気持ちを伝える」という側面をよく表しています。 そして、miki14さんのように、親御さんが認知症になり、生前贈与が難しくなってしまったというケースは少なくありません。生前贈与を検討する最適なタイミングは、親御さんがご自身の意思を明確に持っているうち、つまり「元気なうち」であるという点は、皆様にご認識いただきたいポイントです。 今回はいよいよ最終回です。 ここからは、「贈与制度」の基本的な注意点(どう選択するか)について、お伝えしたいと思います。 長くなりますので、ご興味のある方に読んでいただければと思います。 生前贈与には「暦年贈与(通常の贈与)」と「相続時精算課税制度(選択した場合の贈与)」の2つの制度があります。2024年1月からの税制改正により、これらの制度は大きく変わりました。 1. 暦年贈与の改正(持ち戻し期間の延長) これまでは、亡くなる前3年以内に法定相続人など相続で財産をもらう人にした贈与は、相続財産に加算されて相続税の対象となっていました。これを「持ち戻し」と言います。「持ち戻し」は年間110万円以下の贈与税の非課税枠内での贈与も対象となります。 今回の改正により、この持ち戻し期間が段階的に「3年」から「7年」へと延長されました。これは、生前贈与による相続税の節税効果を抑制するための措置です。贈与を早めに始めれば始めるほど、この持ち戻しの影響を受けにくくなるということになります。(持ち戻しには100万円の控除額があります。) 2. 相続時精算課税制度の改正 この制度は、生前に2,500万円までの贈与を非課税で行い、相続発生時にその贈与財産を相続財産に加えて精算するというものです。 今回の改正で、この2,500万円の特別控除枠とは別に、年間110万円までの非課税枠が新たに設けられました。この110万円以下の贈与については、相続時の精算(持ち戻し)の対象外となるため、使い勝手が向上しました。 では、どちらの制度を選択したらいいか、について3パターンの場合についてご説明します。 パターン①年間110万年以下の贈与 仮に毎年110万円の贈与を続けた人が亡くなった場合、「暦年課税制度」では亡くなる前7年分(770万円―100万円の控除額=670万円)が相続税の計算対象となりますが、「相続時精算課税制度」なら贈与された財産は一円も相続税の対象となりません。つまり非課税枠内の贈与であれば「相続時精算課税制度」の方がお得ということになります。 パターン②贈与税の非課税枠(年間110万円)を超えて行う贈与 高額な相続税が見込まれる場合、年間110万円以下の贈与では大きく相続財産を減らすことができないため非課税枠を超えた贈与で大きな節税効果を狙う方が有利なケースが多いです。 その場合はいくら贈与するのか、何年贈与するのかで、どちらの制度を利用すべきかの最適解が変わってきます。非課税枠を超えて贈与する場合は税理士に相談することをお勧めします。 パターン③孫など相続で財産をもらわない人への贈与 孫など相続で財産をもらわない人へは「暦年課税制度」がお得です。7年以内の贈与が相続財産に持ち戻しとなるのは相続で財産をもらう人だけだからです。 逆に相続で財産をもらわない人に「相続時精算課税制度」で贈与してしまうと、年間110万円を超えた分が相続税の対象となってしまいます。しかも法定相続人ではない孫は相続税が2割増しとなりますので要注意です。 皆様、長期にわたり円卓会議にご参加いただき、誠にありがとうございました。具体的なケースから、家族の思いの伝え方まで、貴重なご意見を数多くいただきましたことに、心より感謝申し上げます。 「生前贈与」を通じて、私たちは単なる節税策ではなく、「親から子へ、どう思いを継承するか」、という本質的な課題について深く考えることができました。 またお会いできることを楽しみにしています。★板倉議長のバックナンバー・おひとりさまを楽しむお金。準備していますか?・相続について、家族で話し合っていますか?・人生後半を楽しむお金。準備していますか?
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