イー・ウーマン（ewoman）

船旅で後ろから追ってきたイルカ（Linden・海外・その他）

サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフで、たくさんのアシカを見て驚いたことがあります。海上に浮かぶ木の板に、所狭しと並んで叫んでいたアシカたち。その騒がしさも印象的でした。海なし国のスイスに現在暮らして、日本の捕鯨に反対する者や団体、調査捕鯨を続ける日本と、双方の記事などを読んで、この問題は今後どうなっていくのか、海棲哺乳類との共存を考えようとするとまず真っ先に頭に浮かぶテーマです。

もっと機会が増えれば（kemkem・岡山県・52）

水族館で芸をするアシカやイルカを見たことはありますが、実際に海で泳ぐ彼らに遭遇したことはありません。海を選択した哺乳類である彼らと、自然に近い形で触れ合える機会がもっと増えれば、現代人の抱える閉塞的気分が解消できるかも。そして資源として彼らを利用してきた歴史とも、正面から向き合えるかもしれませんね。海洋国家日本なのだからもっと海を大切にして共存しなければ、と今回あらためて思いました。

水族館のみです（Anne64・東京都・37）

アザラシやオットセイは水族館でしか見たことがありませんが、下田海中水族館では海の入り江部分を利用したイルカのプールがあり、イルカが自由に泳ぎ回っているのを見て気持ちがよかったです。狭いプールの中で同じところをぐるぐる泳ぎ回っているのを見ると、少し胸が痛みます。研究と個体のバランス調整用の飼育、および水族館を兼ねたような施設ができるといいなと思います。

共存は難しい（ウエトモ・東京都・38）

見たことがあるのは、旭山動物園や、八景島シーパラダイスでです。ほかにも以前、石垣島の沖縄の方で、ホエールウォッチングしましたが、それはどうも無理やり人間が追い掛け回しているようで、なんだかいたたまれなくなったのを覚えています。人間、海棲哺乳類、どちらにとっても良い「共存」というのは、ないのではないかなと、私は思います。

世界の生態系という視点（にゃおん・埼玉県・44）

昔、津軽海峡でイルカと連絡船の併走（？）をみたことがあります。今はやはり動物園や水族館。野生生物との共存というのは、海棲哺乳類に限らず、世界の生態系という広い視野が必要だと思います。進化の過程で絶滅していく生物が、過去にもいたように、これからもいるかもしれない。でもそれは人間のエゴによるものであってはいけないと感じます。人間にとって不都合な生きものも、世界の生態系のなかでは必要かもしれない。研究者の方々にはそうした研究成果も聞かせていただきたいです。

捕鯨（umikko・28）

私はもっぱら食べる方に興味があるのですが……。クジラのベーコンがときどき、小さいころの食卓にありました。今は自分で買うことがないので、めったに食べないですが。あるアメリカ人とクジラを食べる話になったとき、クジラやイルカはかわいいでしょう？だから食べるなんてひどい、と言われたことがあります。でも、かわいいかどうか、ということと、食べるかどうか、ということは、別問題だと思うのですけれど。うまく言い返せずもやもやが残った記憶があります。

日本にもあったらいいな（ゆきなな・海外・その他・31）

香港やシンガポールでは、水族館でイルカなどに餌をあげる・また一緒に泳ぐなどのレッスンがあります。例えば、20分間で500ドル(日本円で5000円くらい)のように、コースによって値段が違います。子どもを持つ親としては、いい教育の場です。イルカたちは、自分の餌代を自分で稼いでます。1つの共存のスタイルだと思います。

フロリダでの教育プログラム（いぬいるか・東京都・52）

フロリダのキー諸島にある「ドルフィン・リサーチ・センター」の教育プログラムに参加した事があります。寮で数日間過ごし、イルカの生理学や保護の仕方を学んだり、一緒に泳いだりもしました。大西洋に繋がるプールに暮らす20頭ほどのイルカと2頭のオットセイは、いずれも全米各地のシーワールドを“引退”したものたち。このプログラムを単位として認める大学もある、と聞いた記憶があります。このような一般向けの啓蒙活動は、共存に向けて大変有意義であると思います。

過剰反応（marco302・海外・その他・40）

共存するためには、昔のように手を加えない。人間も生態系の一部と考え、過剰な保護はしないほうがよいと思います。海獣に関しては、賛否両論ありますが、グリーンピースの活動などをみると、守りたいという気持ちも失せます。実際、アラスカにも、日本にも、アザラシやクジラを食べなければならなかった歴史があり、それは貴重な文化でもあります。動物愛護団体が過剰に守ろうとするからこそ余計、反発が出てくるのではないでしょうか。

たくさんのコメント、ありがとうございました。海棲哺乳類が「かわいい」だけでない現状と、それに対して私たちがどうすれば良いのかについて、私も改めて考えさせられました。
 
Lindenさんのように国外に住んでいると、捕鯨について国内にいるときよりも考えさせられるかもしれません。私も、海外の人と調査をすると、「日本人はクジラを食べるよね」とよく話題になります。研究者の人たちは感情的に非難することはありませんが、umikkoさんのように、「クジラやイルカを食べるなんてひどい」と直接的に非難されてしまう場面もあります。
 
私はきちんと資源管理ができて、持続的に利用できるのであれば、「食文化としてのクジラ」という日本人の価値観は否定されるものではないと考えています（これを英語で主張するのは、なかなか難しいのですが……）。ただ、海棲哺乳類を「持続的に利用して行こう」という考え方は、世界の中でマイナーになりました。捕鯨の問題は、マグロの漁獲禁止への動きとともに、日本と海外の海産物に対する価値観の違いを深く考えさせられるものです。
 
にゃおんさんやmarco302さんがコメントしてくださったように、人間も生態系の一部であることを忘れずにいたいと思います。特に海棲哺乳類は、海という国境も何もない世界を自由に動き回っています。私たちが日本の周りで見る海棲哺乳類も、他の季節には他の国の海にまで回遊しています。海は自分たちのものだから自分で管理する、という考えではなく、みんなのものだから大切に利用していく、という考え方へと転換する必要があるのだと思います。
 
そして、食べるだけでなく、「観て楽しむ」という関わり方も、現在は重要になっています。そのときに、ウエトモさんが危惧されているように、彼らの生活の場にずかずかと入り込んで、追いかけ回す、ということのないように、自主的なルールを作ってウォッチングを行っている海域もたくさんあります。
 
ゆきななさん、いぬいるかさんが書いてくださったように、教育プログラムとして、海棲哺乳類を身近に感じる機会があるのは、「共存」を考える上で重要なことだと思います。ウォッチングのルールや教育プログラムに関しては、海外の方が進んでいるので（たまに行き過ぎていると思うこともありますが……）、いい面は取り入れていきたいですよね。
 
Annne64さんのアイディアのように、研究と教育普及活動を両立できて、個体数調整の弁にもなるような施設を作れたら……。それが私の夢かもしれません。
 
1週間、みなさまと一緒に考えていけたこと、とても貴重な機会となりました。最後に、マッコウクジラの尾びれの写真でお別れです。ありがとうございました！


知床半島、羅臼の海へ、夏から秋にやってくるマッコウクジラの尾びれ

• 2012.06.22
• 三谷曜子 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 助教